近年のAIの進化により、CADを使用する職種や業務に大きな変化が訪れています。特に2024年には生成AIが一般的にも普及したことで、日本でも大きな変革が起こりました。
そこでCADを使う業種や業務について、AIがもたらす影響について、現時点で起こっていること、今後起こり得る未来、そして考慮すべきリスクとデメリットについて書いてみたいと思います。
現時点で起こっているAIとCADの融合
AIはすでにCADツールの進化を牽引していると言っても過言ではないでしょう。生成AIがもつ特長は、CADというエンジニアリングと非常に相性は良いと考えられます。
現時点でもCAD業務にAIを導入する取り組みがいくつか行われています。
- 設計プロセスの自動化
AIを活用したジェネレーティブデザイン機能は、設計者が要件を入力するだけで、数百ものデザイン案を自動生成します。これにより、設計者は効率的に最適な案を選定でき、イノベーションが加速しています。 - エラー検出の効率化
AIが設計データを解析し、設計ミスや衝突を自動で検出する機能が普及しています。これにより、製造工程におけるコスト削減やスケジュールの短縮が実現されています。 - 3Dモデルの迅速な生成
画像認識技術を活用することで、スケッチや写真から自動的に3Dモデルを生成するツールも登場しています。これにより、デザインプロセスの初期段階が大幅に効率化されています。また現在導入が急速に進んでいるBIMやCIMについては、AIによるサポートを受けることによって、プロセスの簡素化が実現されることが予想されます。
AIがもたらす未来の可能性
特に生成AIの企業導入が遅れている日本では、本格的な動きはまだ先になると思います。では今後、AIはCADに対してどのような進化をもたらすのでしょうか?
考えられるポイントを挙げてみます。
- 完全自律型設計プロセス
現在は設計者の補助ツールとして使われるAIですが、将来的には設計そのものを自律的に行うAIが登場する可能性があります。特に標準化された製品設計では、人間がほとんど介在しないプロセスが実現するかもしれません。 - リアルタイムのフィードバックと最適化
AIがリアルタイムで設計の物理的特性やコスト、製造性を解析し、即時にフィードバックを提供する機能が進化するでしょう。これにより、設計と製造の一体化がさらに進むと考えられます。 - VR/ARとの連携による直感的な設計
AIがVRやARと統合され、設計者が仮想空間内で直感的に設計を行い、AIがその場で最適化する未来が予想されます。これにより、クリエイティブな自由度が格段に向上するでしょう。 - スキルセットの変化
設計者やエンジニアは、AIツールを最大限に活用するために、データ分析やAIモデルのトレーニングといった新たなスキルを学ぶ必要が出てくるでしょう。
AIがもたらすデメリットやリスク
しかし、AIを企業が導入するには大きなリスクとデメリットが存在します。日本の社会構造や法律が、AIをどこまで許容できるのか?許容するべきなのか?については、今後もきちんと見定めていかなければならないでしょう。
特に以下に挙げる3,4のリスクについては、企業にとって致命的になりかねないリスクをはらみます。これらの問題をどうやってクリアにしていくかが、今後の課題となることは間違いありません。
- 雇用の減少と役割の変化
設計の自動化が進むことで、特に標準的な作業を担当するエンジニアやデザイナーの役割が減少する可能性があります。一部の職種が消失し、新たなスキルを持つ人材が求められるようになることで、キャリアの不安定化が懸念されます。 - AIへの過度な依存
AIに依存することで、人間の設計能力や創造力が低下するリスクがあります。特に、AIが提供する案が不適切である場合でも気づかずに進めてしまう可能性があり、品質や安全性に影響を及ぼすことが懸念されます。 - 倫理的・法的課題
AIが生成した設計における著作権や責任の所在が曖昧になる可能性があります。設計ミスが発生した場合、AI開発者、ツール提供者、または使用者のどこに責任があるのかが明確でない状況が生じることがあります。 - データセキュリティとプライバシーの懸念
AIが設計プロセスを支援する際、大量のデータを扱います。このデータが不正利用されたり流出したりするリスクが存在し、企業の競争力や機密情報が危険にさらされる可能性があります。 - 初期投資と維持コストの負担
高度なAIツールの導入には多額の初期投資が必要であり、さらに運用やメンテナンスにもコストがかかります。特に中小企業では、これが競争力の格差を生む要因になるかもしれません。
結論
AIとCADの融合は、設計やエンジニアリング業界に革命をもたらしていますが、同時に慎重な対応が必要です。メリットとリスクをバランスよく考慮しながら、この変化に適応していくことが重要です。AI技術を前向きに活用するだけでなく、リスクに対する備えを講じることで、人間とAIが共存する未来を築き上げることができるでしょう。