理系中小企業が文系学生を採用する“新常識” — そのメリットと成功のカギ

近年、日本では少子化や労働市場の変化により人材不足が深刻化しています。特に中小企業、さらに理系分野の企業では、即戦力となる理系学生の採用が年々難しくなっています。

その結果、理系の知識が必須とされてきた設計・設備系企業でも、文系学生を積極的に採用し、入社後に研修で技術を身につけさせる動きが広がっています。

正栄CADスクールで新人研修を請け負っているクライアント企業でも、3割~5割程度、文系学生が占めるところがめずらしくなくなってきました。

これは決して苦肉の策ではありません。実は、文系学生を採用することには、理にかなったメリットがいくつもあるのです。

1. 論理的思考力とコミュニケーション力の高さ

文系学生は、論理的な文章構成、ディスカッション、プレゼンテーションといった能力を鍛えています。設計や設備分野においても、クライアントとの折衝、仕様の説明、チーム間の連携など、技術力だけでは乗り切れない場面が多くあります。文系学生の強みである”伝える力”は、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。

2. 未経験だからこその柔軟性

文系学生は、技術に関する”先入観”がないため、企業独自の技術やノウハウを素直に吸収しやすいという特性があります。経験者ほど”前職のやり方”に固執せず、自社の文化にフィットしやすいのも魅力です。中小企業が求める”色に染まりやすい人材”という意味では、理系出身者よりもむしろ適している場合もあります。

3. 研修による育成は、もはや常識

近年では、研修によって技術者を育成するプログラムが整備されています。設計・設備分野でもカリキュラム化が進んでいます。文系出身でも、1–2年の実務経験を積めば、理系出身者と肩を並べて活躍できる時代です。

4. 多様性が組織力を高める

組織に多様なバックグラウンドを持つ人材が加わることで、新しい視点やアイデアが生まれます。特に中小企業は、大企業に比べて柔軟な発想とスピーディーな変化対応が求められます。文系人材が持ち込む異なる視点は、イノベーションの種となるでしょう。

5. 文系学生を戦力化した企業の実例:株式会社興電舎(宮崎県)

中小企業庁が2023年6月にまとめた「中小企業・小規模事業者の人材活用事例集」という資料があります。その中でも文系学生を採用して成功しているケースがあったので、ご紹介します。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/hitodebusoku/guideline/jirei.pdf

電気・計装・通信工事を手がける株式会社興電舎では、理系人材の採用が難しい中、文系学生や異業種出身者を積極的に採用し、自社での育成に力を入れています。

新入社員は半年間、各部署をローテーションで研修し、その後、本人の希望を考慮して配属先を決定する制度を導入。​文系出身や異業種出身でも希望があれば技術職として採用しています。

また、産業能率大学と連携し、自社向けの教育プログラムを作成集合型のOFF-JT研修や中小企業大学校のマネジメント研修を取り入れ、文系出身者でも資格を取得し、現場で活躍できるよう支援しています。

その結果、2005年頃から積極採用を進め、従業員数は200人程度から現在は371人にまで増加。売上も2022年度で65億円を達成し、2023年の目標である50億円を大きく上回る成果を上げています。


まとめ

文系学生を採用し、戦力化する際のポイントはやはり「教育・育成」です。

興電舎の例でも教育プログラムについては、産業能率大学と連携しています。人材育成のリソースを中小企業が単独でねん出するのは簡単なことではありません。外部のプロと提携することで、効率よく育成を行うことができます。

正栄CADスクールは、設計事務所が母体のスクールだからこそできる独自の実践的なカリキュラムで、未経験からでもCADや設計・製図の知識と技術を身につけることができます。

理系人材だけに固執するのではなく、文系学生にも目を向け、ポテンシャルを引き出す。この柔軟な発想こそが、今後の中小企業の生き残り戦略の一つとなります。”理系出身者じゃないから”と門前払いする時代は、もう終わりました。今こそ、可能性を信じた採用と育成が必要です。

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